整体や運動指導の現場で、骨盤に対して「前傾位ですね」「後傾位ですね」という評価が行われることがあります。
そのため、骨盤の角度とボディラインのつながりや不調改善を期待するクライアントから
「骨盤が前傾していると言われたので、恥骨を引き上げるイメージで立つように気をつけているけど、これで正しい?」
「お尻を丸くしたいから、骨盤を前傾に矯正してほしい!」
という相談を受けてきました。
その都度お伝えしているのは
骨盤が前傾しているから後傾させる。
後傾しているから前傾させる。
身体はそんなに単純ではないということ。
今回の研究会では、骨盤をテーマに骨盤後傾位で固まってしまう姿勢をどう考え、どう評価し、どうアプローチするのかについて学びを深めました。

骨盤の前傾と後傾
アプローチのポイント
骨盤前傾タイプ|「もたれて支える身体」
骨盤前傾タイプでは、腹圧の支持力が低下しているケースや、腰椎や股関節前面、靱帯、腸骨筋などへ身体を預けるようにして立っているケースが目立ちます。
「反り腰だから腹筋を鍛えましょう」
「腸腰筋をストレッチをしましょう」
というように、骨盤の角度だけを見てアプローチしても、改善につながらないことがあります。
骨盤前傾タイプに必要なのは、骨盤を無理に後傾させることではなく、まず荷重を受けられる脚・足を取り戻すこと。
そこが最初のステップと考えています。

骨盤後傾タイプ|「固定して支える身体」
骨盤後傾タイプでは、筋肉で身体を固めることで安定をつくっているケースが目立ちます。
このタイプの方は、胸郭や股関節の自由な動きが制限されて、歩行での体重移動が小さくなったり、アクティブな動作が苦手になりやすいです。
このタイプでは、まず体幹の圧縮を減らし、仙骨のうなずき運動が起こりやすい環境をつくることが最初のステップと考えています。

年齢と骨盤後傾
臨床経験からの傾向ですが、同じ骨盤後傾でも、年代によってその特徴が分かれます。
40〜50代では、前方シフトを伴う骨盤後傾。
さらに年齢が上がると腰椎の前弯減少を伴う骨盤後傾をみる機会が多いです。
この違いには、加齢に伴う組織の柔軟性の変化に加えて、日常生活の中でどれくらい運動による刺激を受けているかも関係していると考えています。
なぜ骨盤後傾で固まるのか?
骨盤後傾の背景には、姿勢アライメントだけでなく、さまざまな要素が関係しています。
- 腹圧による支持がうまく使えず、骨盤の位置を変えることで安定をつくる
- 身体を固めることで安定をつくる防御的なパターン
- 股関節や胸郭の可動性が低下し、体重移動が小さくなる
- 呼吸パターンが変化し、体幹を柔軟に使いにくくなる
- 筋・筋膜の緊張や固定によって動きを制限する
今回の研究会では、その中でもサロンワークで対応する機会が多い、「体幹の圧縮と固定」に焦点を当てて考えました。


骨盤後傾位へのアプローチ
骨盤のマッピング(ASIS・恥骨・PSIS・坐骨・腸骨稜)
中殿筋・小殿筋
滑走性が低下した大腰筋・腸骨筋
腸骨筋のリリース
大腿直筋の付着部の拘縮
仙骨のうなずき運動(ニューテーション)
仙腸関節の矯正
股関節のポンプ
短縮位で硬くなったハムストリングス(筋間中隔)の離開
仙結節靱帯のリリース
梨状筋のリリース
まとめ
骨盤の角度を意識的にコントロールするだけでは、身体の支え方そのものは変わません。
骨盤だけを元の位置へ戻そうとしても、身体がその姿勢を選んでいる背景が変わらなければ、また同じ姿勢へ戻ってしまいます。
骨盤の前傾や後傾に対して、角度そのものを細かく直そうとすることよりも、
「なぜ身体がそのような固定パターンを選んだのか」を考えましょうという研究会でした。

